北朝鮮がICBMを完成か

 北朝鮮は7月4日午前9時半、日本海方向に向けて弾道ミサイル1発を発射した。約40分間飛行し、日本の排他的経済水域EEZ)内に着水した。北朝鮮メディアは同日、「特別重大報道」を発表し、大陸間弾道ミサイルICBM)の発射実験に成功したと伝えた。

 北朝鮮の発表によると、ミサイルは「火星14」型で、933キロ飛行し高度は2802キロに達した。北朝鮮は「核兵器とともに、世界のどの地域も打撃できる最強のICBM保有した堂々たる核強国として米国の核戦争威嚇・恐喝を根源的に終息させる」と強調した。

 北朝鮮による弾道ミサイル発射は今年10回目だった。5月には中長距離と称する弾道ミサイル「火星12」や新型中距離ミサイル「北極星2」を相次ぎ発射した。その後、ICBM試射が迫っていると主張していた。日米等専門家の多くは、ICBMの完成は、早くて年内と見ていた。これほど急ピッチで北朝鮮が開発を進めていることを予測できていなかった。

 7月4日にICBMの発射実験を行ったのは、当日がアメリカ合衆国独立記念日であることに合わせて、米国に向けて強力なメッセージを送ったものだろう。

 米国は当初、このミサイルを中距離弾道ミサイルと発表した。しかし、その後、日米韓の三国の政府がICBMだと認めた。ICBMとは、冷戦時代の米ソの合意によって、射程5500キロ以上の弾道ミサイルのことと定義されている。火星14型は、北朝鮮が5月に発射した液体燃料式の弾道ミサイル「火星12」を2段式に改良したものとみられる。今回の実験では、高度約2800キロに達する高角度で発射し、ロフテッド軌道で落下させた。通常角度で発射すれば、射程は6000〜8000キロ超に達すると見られる。米国のアラスカ州は射程に入り、米太平洋軍司令部があるハワイも同様である。もし8100キロを超えれば、米国本土のシアトルにも届くものとなる。

 今回の実験で、ミサイルの弾頭部が大気圏に再突入する時に生じる数千度の高温に耐えられたかどうかは不明である。核兵器を搭載して敵地を攻撃するには、弾頭の大気圏再突入技術が確立されなければならない。ICBMに搭載する核弾頭の小型化については、相当の水準に達していると見られる。北朝鮮は、米国等の動きを見ながら、6回目の核実験を強行しようとするだろう。日米韓への脅威は格段と増しつつある。

 金正恩朝鮮労働党委員長は、今回のICBMは「米国への贈り物」だとし、「今後も大小の贈り物をしばしば送ってやろう」と述べて、挑発している。これまでトランプ米大統領は、北朝鮮がレッドラインを越えれば、軍事行動も辞さないことを述べてきている。具体的には、米本土が射程に入るミサイルの実験及び核実験である。だが、それが厳密には何を意味するのかについては、曖昧である。仮に今回のICBMの実験が米本土が射程に入るICBMの完成だとするならば、レッドラインを越えたことになり、米国は具体的な行動を起こさなければならなくなる。だから、曖昧な態度を取っていると見られる。

 7月8日トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、G20首脳会議が開かれていたドイツ・ハンブルクで会談した。両首脳は4月の初会談で中国が北朝鮮に対して圧力をかけることの重要性で一致した。しかし、その後も北朝鮮ICBMの発射などを続けており、ほとんど明確な効果が出ていない。トランプ大統領は、習主席に強い不満を述べ、中国が北朝鮮対策を積極的に実施するよう求めた。

 ティラーソン国務長官は、7日の記者会見で、中国は一時北朝鮮に対する圧力を強めたものの、「その後、動きを止めている」と不満を表明した。米国は6月末に北朝鮮問題に関連して中国の銀行を経済制裁の対象に加えたが、「北朝鮮と経済取引がある組織は、どこの国の組織でも追及することでさらに圧力をかける」との決意を示した。

 トランプ政権の中国に対する不満は強まっており、中国に対朝圧力をかけさせるための方策を実施していくだろう。

 朝鮮半島では、ICBM実験の翌5日朝、米韓両軍が韓国東海岸でミサイル発射合同訓練を実施した。韓国軍合同参謀本部の発表によると、この訓練で動員されたのは在韓米軍の地対地ミサイル「ATACMS」と韓国軍の「玄武2A」だった。標的が「敵の指導部」だと明らかにし、斬首作戦であることを明言した。北朝鮮の弾道ミサイル挑発に対して、米韓が弾道ミサイル訓練を行ったのは初めてだった。韓国軍消息筋は「北朝鮮ミサイルを先制攻撃する演習と考えて構わない」と述べている。

 米軍は、紛争地で敵の撹乱や戦意喪失を狙う情報戦を展開する。朝鮮半島の心理戦は「作戦計画5030」と呼ばれる。北朝鮮指導者の恐怖心を煽るデマを流し、金正恩氏への心理圧迫も狙うものとされる。

 複数の米報道機関によると、トランプ大統領は近くICBM発射に伴う対北措置を承認する予定であり、措置のなかには有事対応の戦力増援が含まれるという。これも中国の出方による部分が大きいだろうが、米国西海岸主要都市を十分射程に収めるようなさらなるICBMの射程の延長や、核兵器小型化のための実験を北朝鮮が続けていった場合、米国が何も行動しないことは考えにくい。わが国は、近い将来、米国と北朝鮮が激突する事態が起こりうることを想定して、防衛体制の整備を急がねばならない。最大の課題は、憲法の改正である。日本人自身の手で新たな憲法を作り、日本人が日本を守ることのできる体制を作り上げねばならない。